ブルーライト漢詩19

    車中偶成

     電脳当今僣恣頻
     電脳でんのう(パソコン)当今
     僣恣せんし(わがまま)しきりりなり
     版行危殆是何因
     版行(出版)の危殆きたい(危機)
     れ何の因ぞ
     車中惟見手機弄
     車中ただ見る 手機(携帯電話)
     を弄するを
     看報読書真足珍
     報(新聞)を 書を読むは
     真に珍とするに足る

解説

神奈川新聞平成26年月日日曜日版から転載

漢詩の作り方

≪漢詩アラカルト≫
 漢詩は中国人が読んで分か る言葉を使わなくてはならな い、とされる。例えば「油断」は 日本語で、中国人にとっては「注 意を怠る」という意味はなく、 「油を断つ」「油がきれる」と受 け止める。日本風の言葉は「和 習」といい、禁止されている。 上掲詩の「電脳」「手機」は もちろん杜甫や李白の時代に はないものだが、現代中国語 でそれぞれ「パソコン」「携 帯電話」の意昧で使われてい るのでOKだ。日本の漢詩な のだなら鱩(はたはた)「峠」 などの国字に平灰(ひょうそ く)をつけて使えるようにし たい、という意見もある。

作者紹介

岡崎満義
おかざき・みつよし
1936年鳥取県生まれ。京都大文学部卒。 60年文芸春秋入社。
「ナンバー」「文芸春秋」編集長など。 99年退職。全日本漢詩連盟常務理事、 神奈川県漢詩連盟会長。
茅ヶ崎市在住。
shinkanren@.jp

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