ブルーライト漢詩13

 

  徳国与松本清張先生同
     取材旅行

 徳国ドイツに松本清張先生とともに取材旅行をす

     急坂喘登如上霄
 急坂きゅうはん 喘あえのぼるは  そらのぼるがごとし
     文宗使我進推腰
 文宗ぶんそう(作家) 我をして こしし進めしむ
     蕪荒遺跡無人訪
 蕪荒こうぶ(荒れ果てた)の 遺跡 人の訪う無く
     唯望葡萄田野遥
 唯望ただのぞむ 葡萄ぶどうの田野 はるかなるを

解説

神奈川新聞平成25年10月6日日曜日版から転載

漢詩の作り方

≪漢詩の作り方⑩≫
大正天皇の漢詩は風雅で ユーモアがあり、詩的セン スも抜群で、少しでもあや かりたいと思う。今回は清 張先生の「腰」を押したこ とをぜひうたいたかったの で、韻は腰の蕭韻で決まり。 ドイツのバイエルン州はビ ールとワインの村が多く、 野山にブドウ畑が広がって いた。同じ蕭韻の「遥で それを表そう。詠みたい風 景を思い浮かべながら、使 うと決めた韻字の下3字の 言葉を詩語集から選び出 す。「遥」には「一天遥」「一 水遥」などの例があったの で、「田野遥」と置き換えた。

作者紹介

岡崎満義
おかざき・みつよし
1936年鳥取県生まれ。京都大文学部卒。 60年文芸春秋入社。
「ナンバー」「文芸春秋」編集長など。 99年退職。全日本漢詩連盟常務理事、 神奈川県漢詩連盟会長。
茅ヶ崎市在住。
shinkanren@.jp

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