ブルーライト漢詩9


   劉暁波氏見授
   諾貝爾平和賞

   劉暁波氏諾貝爾ノーベル平和賞を授けらる

     囹圄三年一哲賢
    囹圄れいぎょ(牢獄)三年 一哲賢(賢人)
     猶号民主与人権
    猶号なおさけぶ民主人権と
     聞不吉報却深鎖
    聞くやいなや吉報却って深くとざさる
     禹域丹心万世伝
    禹域ういき(中国)の丹心(国を思う心)
     万世に伝わらん

解説

神奈川新聞平成25年6月2日日曜日版から転載

≪漢詩の作り方⑥≫

 漢詩を作るとき気をつけなけ ればならないのは、日本でだけ 通用する漢字熟語をうっかり使 ってしまうことだ。これを「和 習=和臭」という。例えば「人 間」。日本では「ヒト」の意だ が、中国では「俗世間」。仲間 が最近調べてくれた和習例を挙 げる(後半が中国での意味)。  故人(死んだ人/旧友)、野望(大  それた望み/遠く野づらを眺め  る)、仰天(びっくりする/天  を仰ぐ)…。上掲詩の「民主・ 人権」も李白杜甫時代にはなく  和習的な言葉だが、現代中国で  も使われているので、使った。  夏目漱石の漢詩にも和習がある といわれるが、中国人には評価 が高いという。

作者紹介

岡崎満義
おかざき・みつよし
1936年鳥取県生まれ。京都大文学部卒。 60年文芸春秋入社。
「ナンバー」「文芸春秋」編集長など。 99年退職。全日本漢詩連盟常務理事、 神奈川県漢詩連盟会長。
茅ヶ崎市在住。
shinkanren@.jp

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